先日、うっかり質が低い選挙に関するニュースを目にしてしまった時に、華氏451度に出てきたこの一節を思い出しました。
「政治の話の方がいいわ。ねえ、あなた、話してくださるでしょう?」
ボウルズ夫人も同調して、
「それがいいわ。わたし、このあいだの選挙に投票してみたわ。みんなと同じように。ええ、ノーブル大統領に入れましたの。だって、あのひと、これまで大統領になった政治家のうちでは、一番きれいな男ですもの」
「あの人に比べて、反対候補のひどかったこと!」
「そうね、あれではひど過ぎるわ。背は低いし、顔立ちも品がないし。ひげもろくに剃ってなくて、髪だって、満足にクシを入れたことがないみたいよ」
「野党はなんのつもりで、あんな男を候補者にしたんでしょう? 長身の人の相手に、あんなちっぽけな男を担ぎ出したって、どうにもなりはしないわね。それに、あのひと、言うことがはっきりしないわ。口をもぐもぐさせるだけで、演説を聞いたけど、半分は聞き取れないのよ。またに聞き取れた言葉は、なんの意味だかわからなかったし」
華氏451度の世界では、こんな風に投票する人が決められているみたいです。
レイ・ブラッドベリはテレビの登場によって人々の思考が失われ、育児や政治に対する考えなどの質が低くなると予想して、上記のようなシーンを書いたようです。
もちろんこれは警笛を発する為に書かれた極端な話であって、現在、日本で行われている政治に関する話を聞く限りでは、彼の危惧したような未来が来ていないものと思われます。
たとえば今、政治に対する話を人にすれば、下記のような有益な会話ができるのではないでしょうか。
「あの人はどうも頼りなく見えるでしょ? 先日の決議の際も時間ばかりかけて、どうもハッキリしなくて。もっとバシッと決めてくれる方の方が代表者としては良いですよね」
「先日の決議についてはどう決めるのが良かったとお考えですか?」
「どうするのが良かったかはわかりませんけど、もっと良い結論をさっと出してくれる有能な人がいいですわよね。前の代表者だって、わたしだって読めるような漢字を何度も読み間違えていて、とても有能には見えなかったですもの」
「彼がとった政策については、どう考えていますか?」
「政策? 彼は何をしたかしら。ああ、1万2千円を配ってましたよね。家族を連れて外食をしたら終わってしまいましたけど」
えーと、半分実話で半分脚色です。世の中、いろんな人がいますからね。いろんな答えがあります。
と、まぁ、そんな冗談は置いておいて、ちょっと話変わりますがITの進歩って政治をいろいろ変えられるなぁということを最近思ったりしました。
例えば予算のほとんどかからない直接民主制とか、どこかのブログで見かけたのですがSubversion(バージョン管理ソフト)による法律の管理とか。あと、採決までの流れをRedmineでチケット管理して公開しておくと後で追うのが楽になってありがたいかも。
個人的には投票による政権選択は経済や犯罪率などの数字よりも心象を大事にしてしまうので良いと思ってなくて、並列する複数の行政を作ってそのうちの1つを選択できるというシステムの方がうまくいくんじゃないかなぁと思ってるのですが、世界がもっとバーチャルな方向に進んだら、それも可能じゃないかと思ったり。