2010年07月02日

キングジムのデジタル文具戦略に見る、アナログ製品の生き残り方

ポメラのヒットで話題になったキングジムが、今年の夏、相次いで新しいデジタル文具と呼ぶべき商品を投入する。

1つは電子卓上メモ「マメモ」
http://journal.mycom.co.jp/news/2010/06/29/044/?rt=na

タッチペンでメモを取れる卓上メモで、6,279円という低い価格が設定されている。仕事などで卓上メモを使っている人は注目の一品だろう。

もう1つは電子名刺ホルダー「ピットレック」
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1006/29/news050.html

OCR機能を持ち、名刺の情報を保存できる機器で、12cm×6cm、85グラムという名刺入れと変わらないサイズ。価格は2万7300円。

この2つの商品の共通点は、卓上メモや名刺入れという既存のアナログ商品を、できるだけ形状をそのままに電子化したことだ。これはメモ帳を電子化したポメラのコンセプトに近いものがある。


事務用品のメーカーであるキングジムにとって、卓上メモや名刺入れは専門分野に当たる。例えば昨年の4月には下記のようなアナログ商品を発売している。

キングジム、レザーや木目など素材感にこだわった名刺入れ
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/0904/07/news044.html

デジタル製品を作るだけなら専門の企業に太刀打ちできない。自社が製造のノウハウや顧客のフィードバックを持っている得意分野でデジタル化に踏み出すというのは、理に適った戦略と言えるだろう。

特に文房具は万年筆や皮手帳に数万円を出す人間がいる分野だ。この分野でより使い勝手の良い電子商品、それも他の企業がまだ手を出していない製品を出せば、求める人間は出てくる。


この機軸は事務用品以外の分野でも活かせる可能性がある。ポメラはスマートフォンやモバイルPCで十分に代替できる製品だが、他のデバイスよりも扱いやすく値段も手ごろという点でヒット商品になった。

今の世の中、たいていのことはスマートフォンでできてしまう。だが、なんでもできるということは、それに特化したつくりにはなっていないということだ。

もし自社が持っているノウハウを活かせば、単機能ではあるがiPhoneよりも使い勝手が良い製品を作り出せて、同時に価格帯も低く抑えることができるなら、開発を考えてみるのも良いかもしれない。

但し、売れる条件として「日常的にそれを使うユーザがいる」ことが大事だと思われる。例えば週に1度、数分間しか使わない機能であれば、どれだけ良い製品を出しても「iPhoneでできるからいいや」と思われてしまう。毎日使う行為だからこそ、ユーザは便利になることにお金を出す。


もし今回の商品が成功すれば、次はマメモの携帯版や、書き心地にこだわったタッチペンなどを投入してくるのではないかと予想している。

今後もこれらの商品がヒットし、様々なかゆいところに手が届く新製品が生まれることを期待したい。



現実逃避にまた妙な文章を書いてしまった。さて、仕事しないと……