2010年10月21日

もしドラの題材をオープンソースにすり替えたら

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(通称、もしドラ)という長いタイトルの書籍が売れている。

ドラッカーというと経済誌なんかでは定期的に取り扱われる著名な存在だけど、「もしドラ」はそうしたベーシックな存在をライトな物語の風体に書き下した書籍と言える。

難しい題材をライトな物語として扱う書籍というと、ソフィーの世界が思い浮かぶ。哲学の歴史という小難しい話を幻想的な物語の中で説明してしまうという冒険的なアプローチをした書籍で世界中で大ヒットを記録した。

こうした「難しい題材を物語化する」という行為はそれなりに可能性がある試みのようだ。ビジネス書関連の売れ筋商品を見ていくと、少なからず「物語化」を使った書籍が目に留まる。



ところでこの手の形式はIT関連では利用されているだろうか。体験談的な記事や創作的な記事は@ITのようなサイトでよく見かけるのだが、ビジネス寄りのショートストーリーが多く、硬派な知識を書籍という形式で出したものはあまり見かけない。

プログラミングの知識を伝えるのには物語化は向かない。雰囲気は伝わるだろうけど、実際にプログラミングのテクニックはコードなしには伝えられない。変に物語を混ぜると邪魔になる。

では、プログラミングではなくオープンソースを題材に据えるのはどうだろう。概念が分かるようでいて分かりづらい。今後の世の中の流れを考えれば、知っておくに越したことはない知識でもある。なにより、オープンソースという題材は物語にしやすい。

例えば女子高生がフリーソフトを作って成功していく過程で、様々な問題を克服していく姿を描いたとする。彼女が作ったソフトウェアが評判を集めれば集めるほど、ライセンス、特許、コミュニティなど、次々と問題が顕在化していく。彼女はその問題を、もしドラでマネジメントからヒントを得ていたように、もしくはソフィーが父親からの手紙を受け取っていたように、どこか外からの力で解決してく。

ITらしくメールで海外の人とやり取りしてヒントを得るというのが良いかもしれない。メールの相手は仮にSun Liという名前ということにしておこう。最初はメールに頼りっぱなしで問題を解決していくのだが、途中からはメールの返事が来る前に自分で解決して、その後、届いたメールと自分がとった行動と同じだったことに自信を持つというシナリオは鉄板系。もちろん自信を持った後に調子に乗って大きな失敗をするのも鉄板系。

という感じで、オープンソースは実に物語にしやすい。主人公が賞賛を集めて徐々にすごい人になっていくという成功譚にすることもできる。



章立てはこんな感じだろうか。

1. Hello Worldって書いてみました
2. フリーソフトを公開してみました
3. なぜか人気ソフトになっていました
4. オープンソースになりました
5. コミュニティができました
6. 特許に抵触してるって言われました
7. デュアルライセンスにしてみました
8. 管理するのに疲れました
9. 私を雇いたいって言ってくれました
10. 一生この子と付き合っていくことにしました

物語としては成り立っているような気がする。あとは適当に、出席日数がヤバくなったとか、周りと会話が合わなくなってきたとか、親からの理解を得られないとか、女子高生らしい葛藤をまぶせば出来上がり。

主人公は別に男でも大学生でもOLでも良いのだけど、売れ筋を考えると女子高生なんだろう。たぶん。

あとはタイトルをどうするか。『もし工学部の女生徒が「それがあたしには楽しかったから」とつぶやいたら』とかかな。うーん、あまりと言えばあまりなタイトルだな。じゃ、『フリーな世界』とか。ダメだな。フリーという言葉はフリーソフトに直結しない。『女子高生プログラマはマスコットペンギンの夢をみるか』とか。うん、微妙。

ドラッカーくらいインパクトがあって購買意欲をそそる言葉ってないだろうか。Hello Worldは良い言葉なんだけど、OSSに直結しないし。ちゃんとオープンソースって言葉を入れて、その上で良いタイトルであれば良いよなぁ。『留年とオープンソース』とか。



なんてことを妄想した。相変わらず妄想しただけ。